(7)マトリックス編

解説



インタビュー(7)マトリックス編


まだある?しゃべること。

伊藤:あります。次、あの、これぼくは聞いてないんですけど、あの、吉福さん、マトリックス論っていうのを話されたって聞いたんですけど。

うん。まだちゃんとは話してないけどね。どこで?

伊藤:日本で。あ、坂田さんから聞いたのかな。えー、まあそれをちょっと聞きかじるに、人間はまあこう成長過程の中で、それぞれその場その場でマトリックスをもっていると。ま、最初は母親で、でそれが地域社会になったり友達仲間になったり、会社になったり、日本社会になったりっていうふうに、で、それが、人類全体みたいにマトリックスが広がると、また、あー、まあそこまでの可能性、まあ地球とかそういう大きい可能性があるっていうような話をされたって聞いてるんですけど。それは大丈夫ですか?そういうようなことで。。

いま言った部分まで?うん、危ない部分がいくつもあったけどね。(笑)

伊藤:あるんですか?

いいよ、それで?そのまま言ってごらん?

伊藤:で、ぼくマトリックスという話をどうして吉福さんされたのかなって思ったんですよ。意図ですね。

あ、なんでそのMatrix(マトリックス)という概念を持ち出してきたのかってことを言ってるの?

伊藤:はい。借景もそうなんですけど、その、最近吉福さんがそういうことを話している意図を知りたいんですよね。

意図?マトリックス。。それをしゃべってる意図?

伊藤:えーと、だから、

いやいや、考えさせてちょっと。

伊藤:はい。

あのー、マトリックス論っていうのはさ、基本的に非常にダイナミックな理論なんだ、考え方としては。それと発達進化ということをベースに生き物、哺乳類を見ていった場合、まあ生命体でもかまわないけどね。生命体を見ていった場合、マトリックスという概念を持ち込んでくると非常にわかりやすくなる。っていうことがそれを使ってる意図としてはそれはね。
それと、マトリックスという概念を持ち込んでいくと、個人と集合、個人と社会、そういうような捉え方を考えた場合でも、集合的にものごとを捉える場合にマトリックス論で理解できることが膨大にあるってことだよね。

だから個人の生命体の場合も、社会といったような場合にも、マトリックスという概念を使って、その発達成長進化のダイナミックな動きを理解すると、個人の場合も集合の場合も両方ともうまく理解できる。っていうことがあるからそれをね、マトリックス論をね。

で、現実に物理的なこの社会の中に要するにマトリックスっていうのはもうまさに存在してるんだよ。で、特に幼い生命、幼い生命が生きていくうえではそういったものは絶対的に不可欠であって、多くの生命体にとってね。とくに人間にとっては、知能の発達にとって非常に重要であるってことだよね。

で、マトリックスの関係そのものが知能の発達だけではなくて、えー、ね、(ため息)まああなたひとりに話しているからどうでもいい、というかあんまりきちって、あの、普通にたくさんのひとに話してると、ここで、いまのところでひっかかっちゃうんだよ。なぜひっかかるかっていうと、えー、いっぱい話さなきゃいけないことがでてきてるんだよ、いまのところですでに。もうね、いまの話でいったら、こっから2,3時間かかるんだよ。その話さなきゃいけないことを話すために。それからその先にしかいけないんだけど、まあ相手があなたひとりだから、それをやらないって言ってるんだよねいまね。

で、なんのことを言わんとしてるかっていうと、成長発達進化だっていうとさ、だいたいこどもが大人になる間って普通に考えるじゃんか?で、ぼくが言ってる成長発達進化っていうのは大人になるまでのことを言ってるんじゃぜんぜんないんだよ。人間が死ぬまでの間、ずーっと成長発達進化してると、成長発達してると思うから、そのすべてにあてはめてるんだよね。だから一般的にいうと心の成長、みたいなことにも全部あてはめて語ってきてて、とくに、一般にもう成人してこれ以上物理的には体は縮んでいくだけで大きくはなっていかないような状態に達した後も、そのマトリックスと呼ばれるものは存在しなくなるわけじゃなくて。そのマトリックスとどういう姿勢で交わるか、によって、その人の知的能力であるとかね、その人の存在の能力、のもっている根源的なポテンシャルのようなものに力があるのかないのかっていうことが大きくかわってくる、ことがあるので、で、そのマトリックスの話をぼくは(不明:)してるんだよ。だからマトリックスというのはこどもが必要としてるものではなくて、大人になっても、死ぬ間際にも必要なものなんだ、とぼくは言ってるんだよ。我々にとっては。で、そのマトリックスとしっかりとした絆、bonding、bondingをすることによって、はじめて我々のもっている様々な可能性のようなものが開花していく。と考えるんだよねぼくは。
単純に言うと、こどものころには母とか父のようなものがマトリックスとして機能していくんだけど、大の大人になって、自分でしっかりとこの地球上に立てるようになってくると、よりはるかに抽象的な概念のようなものが、しっかりとしたマトリックスとして機能するようになることもある。で、そういうふうに機能してマトリックスといい関係を結べていくと、その人がもってる能力、ちから、可能性、といったようなものがしっかりと発揮されていく可能性が高い。っていうことだよね。
それがあるので、そのマトリックスという概念で、個人の成長を見、社会をあるいは人類全体の成長発達を見る、という作業をぼくはしてると思う。
わかるかな?

伊藤:集団が発達する、集団にもマトリックスがあるんですか?集団そのものが個人にとってマトリックスになりますよね?

いや、マトリックス、たとえば考えて見ればわかるでしょ、お母さん、母親がさ、その存在そのものがマトリックスになるでしょ赤ん坊にとって。ところがお母さんにもマトリックスが必要でしょ?そう思わないかい?それは当然だよね。社会、社会そのもの、人間が一人で何かしようが、7,8人になろうがさ、100人になろうが、1億人になろうが、それはひとつの集団だとしたらさ、その集団そのものの存立にはさ、不可欠なものがあるでしょう。何かによっていかないと存立しないでしょって言ってるんだよ。
例えばさあ。。だんだんだんだんイライラしてきてんだよね、おれね。遅いんだよ理解が!(笑)

伊藤:理解が遅い。はい。

あの、例えばさ、第2次世界大戦に向かうまでの日本っていう国のことを考えてごらんよ、なにがマトリックスだったかわかるかい?明治維新から。天皇制だよ。天皇制のようなものが、国民全員がうんと言ってたと言ってるんじゃないんだよ、日本という文化、民族にとって何がマトリックだったか、天皇陛下だったんだよ。だから、みんな死ぬときに、天皇陛下バンザイ、って死んでったでしょ?その話は聞いたことあるでしょ?

伊藤:あります。

で、第二次世界大戦が終わって、マトリックを失ったんだよ日本は。一応象徴としての天皇は置いたんだけど、マトリックじゃなくなったのよ。戦後の混乱、あなたが生まれたときからずーっとやってきたのが、マトリックスがしっかりとない状態のままで、単なる全員の生活レベルの向上、というね、単なる物理的に目に見える目標に向かって進んでただけなのよ。価値観は大混乱をずーっときたしてたの日本の中は。いまもその混乱なんだよ。価値観は。なぜそういう混乱が起こってるかというと、明確なマトリックスを持てていないからなんだよ。マトリックスが持てればアイデンティティもしっかり持てるんだよね。で、日本という国のアイデンティティってはっきりしてないでしょ?やっぱり。
そう思わないかい?

伊藤:はい。

それは天皇制が崩れたことによってマトリックスが崩れて、おかしくなってったんだよ。で、この国なんかを見てもわかるよ、この国のマトリックスが一体なにかっていうと、まだ建国270,280年の年の国だよねこの国は。で、この国のマトリックスっていうのはフリーダムなんだよ。自由の女神に象徴されるそれなのよ。でも大半の人にとって、マトリックスそのものが抽象的すぎて膨大すぎて、大半の人にはそれがマトリックスだと感じられないんだよ。フリーダムをマトリックとして生きていく、って人に不安しか与えないんだよ。わかるかな?自由平等を叫ぶでしょ?この国は。平等はちょっと違うかもしれないけど、そのへんがマトリックスになってるんだよ。でもマトリックスが機能していないからこの国もぐじゃぐじゃなんだよ。わかるかな、そのことは?

で、集合的にマトリックスは必要だってぼくは言ってるんだよ。を持ってないとうまくいかないって言ってるんだよね。もう歴史をずーっと振り返ってみればすぐわかるよ。どういうことがマトリックスになってるのか、どうなってるのか、っていうのはもう一目瞭然でわかるよ、いろんな民族の歴史を見ていくと。それからマトリックスがどういうふうに変わっていったのか、っていうのも明確にわかるし。でいまいったい日本に何が必要とされているのかっていうのも明確にでてくるからそうすると。いま言ったみたいに、天皇制のようなマトリックスがあったのが崩れて、それ以降ははっきりとしたマトリックスがないままでしょ?じゃあいま日本のいるところ、非常に多様な価値観をもった国民がいろんな人が存在してる中で、でもそれでも画一性が高いでしょ?で、これがこの先にどうなるかっていうのは、日本がいったいどういったようなことをね、マトリックスとして今後やっていくのか、どういったことをアイデンティティにしてやっていくのか。マトリックスとアイデンティティっていうのは切っても切り離せないものだから。マトリックスが何かによってアイデンディティもはっきりしてくるし。で、アイデンティティがはっきりしてくるとマトリックスもはっきりしてくるっていうもんなんだよ。
だから、そのあたりのところを日本っていうのはいま探る必要があるっていうのは明らかだから。そういう目で見ていくといろんなことよく見えるでしょ?

伊藤:はい。

だからぼく持ち込んで、語っているんだよ。集合的なマトリックスと個人的なマトリックス。で、一個一個の家族っていうユニットもみんなマトリックスを持ってるんだよ。(だからあなたの伊藤家っていう家、にもなんらかのマトリックスがあったはずなんだよ。あるはずなんだよね、なんらかの形でね。大丈夫かい、それで?

つづく・・・